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治療症例のビフォー・アフターと詳細

患者様 60代男性
治療期間 10ヶ月
治療概算 259.6万円(インプラント体×4本埋入 /
スクリューリテインセラミッククラウン×7歯分 /
(プロビジョナル)仮歯×7)
骨造成 ラテラルアプローチ(サイナスリフト)・GBR・スプリットクレスト
※費用は治療当時の料金となります
担当医 秋野 徳雄

来院動機

前歯が歯周病で抜けてしまい、ノンクラスプデンチャーを使用していたが、
「違和感がある・しゃべりずらい タ行がいえない、やはり入れ歯は入れ歯噛めない。」を主訴に来院されました。

前歯から奥歯にかけて、歯が喪失しており、歯周病が進行して骨吸収が進行している箇所も認められるため、
【欠損部位にインプラント治療するのは難しい】と他のクリニック様にて、診断され、入れ歯治療を受けた患者様です。 保険外の入れ歯にしたがあまり噛めない、本当にインプラント治療はできないのか?が主訴になります。

治療計画

前歯を歯周病によって失い、ノンクラスプデンチャー(金属のバネが見えない入れ歯)を使用されていた患者様です。

しかし、

  • 「違和感がある」
  • 「しゃべりづらい」
  • 「特にタ行が発音しづらい」
  • 「やはり入れ歯は入れ歯で、しっかり噛めない」

といったお悩みを抱え、ご相談に来院されました。

口腔内を精査したところ、前歯だけでなく奥歯にも欠損が認められ、長年の歯周病により顎の骨(歯槽骨)の吸収が進行している部位も確認されました。

そのため、過去に複数の歯科医院にて

「骨の量が不足しているため、欠損部へのインプラント治療は難しい」

と診断され、入れ歯治療を選択された経緯がありました。

その後、自費診療のノンクラスプデンチャーを作製されたものの、

  • 噛みにくい
  • 発音しづらい
  • 装着時の違和感が強い

といった問題が改善されず、当院ではCT撮影による精密検査を行い、骨の状態や残存歯の予後を詳細に評価したうえで、骨造成治療を併用したインプラント治療の可能性について検討しました。

インプラント治療において重要なのは、単純に「骨が少ないからできない」と判断するのではなく、

  • どの程度骨が不足しているのか
  • 骨造成による改善が可能か
  • 長期的な予後が見込めるか
  • 清掃性やメンテナンス性を確保できるか

を総合的に診断いたしました。

CTによる精密検査を行ったところ、左上奥歯部では上顎洞前壁が鼻腔側へ大きく張り出しており、小臼歯部の骨の高さ(骨高径)が著しく不足している状態でした。

また、上顎前歯部では歯周病による骨吸収の影響で骨の幅(骨幅)が不足しており、そのままでは理想的な位置にインプラントを埋入することが困難な状況でした。

このようなケースでは、単純にインプラントを埋入するだけでは長期的な安定が得られません。

そこで左上奥歯部には、上顎洞内に骨を造成するサイナスリフト(ラテラルアプローチ)を併用し、インプラントを長期的に支えられる骨造成を計画としました。

さらに上顎前歯部に対しては、狭くなった歯槽骨を拡大するスプリットクレストと、骨の不足部分を補うGBR(骨造成術)を併用し、インプラント埋入に必要な骨幅の確保を目指しました。

  • サイナスリフト(ラテラルアプローチ)
  • スプリットクレスト
  • GBR(骨造成術)

を組み合わせた、「骨造成のフルコース」ともいえる症例でした。

前医で「インプラント治療は難しい」と説明された理由も十分に理解できる骨の状態でしたが、CTによる精密診断と適切な骨造成を組み合わせることで、インプラント治療の可能性を見出すことができました。

なお、それぞれの骨造成術の詳細や考え方については別の機会に、詳しくご紹介できればと思います。

どのような歯を作るか

本症例における大きなテーマは、7歯以上に及ぶ広範囲欠損(ロングスパン欠損)に対して、どのような補綴設計を選択するか。このような症例では、「インプラントを埋入できるかどうか」だけではなく、「どのような歯を作るのか」が患者様側からの要望をくみ取り反映できるか。さらに、患者様のご希望やライフスタイルを十分に反映した設計を行えるかどうかも、治療成功の重要なポイントとなります。非常に歯科医師の裁量にゆだねられます。(インプラント専門医側の経験やセンスが問われます。)

実際には上記の過程については、明確な正解が存在するわけではなく、歯科医師の経験や考え方、そして患者様の要望によって治療方針が大きく変わります。

患者様の中には、「失った歯の本数分だけインプラントを入れたい」と希望される方もいらっしゃいます。

もちろん、それ自体は間違った考え方ではありません。治療費が高額になるという側面を除けば、天然歯に近い状態を再現しやすい方法の一つでもあります。

一方で、「最初に歯を失った時点で1本だけでもインプラント治療を行っていれば、ここまで大きな欠損にはならなかったかもしれない」という見方もできます。

また、ドクターによっては残存歯の抜歯を提案し、オールオン4(All-on-4)やオールオンXによる全顎的な再建(フルマウスリコンストラクション)を勧めるケースもあるでしょう。

私個人の考えとしては、できる限り、天然歯は残したいと考えています。

私はインプラント専門医でもありますが、その前に歯科医師です。

残せる歯を守ることが本来の役割であり、天然歯に勝る人工物は存在しないと考えています。(ただ現実には保存困難なケースの方が多いです。)

そのため本症例では、残存歯を活かしながらインプラントブリッジによる機能回復を検討しました。

インプラント埋入本数の妥当性

インプラントブリッジを計画する場合、学術的には以下のような考え方が一般的です。

① 前歯部・右側臼歯部・左側臼歯部の3ブロックに分割する方法

それぞれのブロックを独立した補綴装置として設計することで、メンテナンス性や応力分散に配慮した治療が可能になります。

② 1ピースの連続ロングスパンブリッジとする方法

長いブリッジを一体化させる場合には、1歯おきにインプラントを配置することで力の分散を図り、審美性・機能性・長期安定性のバランスを取ることが推奨されています。

本症例では、以下の2つの設計案を立案しました。

【2ピース設計】

前歯部と臼歯部を分割

21123 45  計 5本埋入(埋入部位〇:②1①2③ ④⑤)

【1ピース設計】

前歯部から臼歯部までを連結

2112345   4本埋入(埋入部位〇:②1①2③4⑤ )

どちらの方法にもメリット・デメリットがあります。

重要なのはインプラント本数ではなく、

  • どのように力を分散するか
  • 将来的な清掃性を確保できるか
  • トラブル発生時に修理しやすいか
  • 長期的な予後が期待できるか

という点です。私は左側上顎において、私は意図的に2 3 の間に埋入しますが、、その理由はまたの機会に、、、

まず、2ピース設計の最大のメリットは、将来的なトラブル発生時のリカバリーのしやすさにあります。

本症例では左上臼歯部にサイナスリフト(ラテラルアプローチ)を併用しています。

サイナスリフトによって造成された骨は、従来困難と言われた患者様に対して、インプラント治療を可能にする非常に有効な治療法ではありますが、生まれ持った天然の骨と比較すると力学的には不利な側面(弱い)があります。

もちろん長期に安定する症例も多数存在しますが、長い年月の中で再度骨吸収が生じたり、インプラント周囲炎などの影響によってインプラントを失う可能性を0%にすることはできません。

仮に将来的に④⑤部のインプラントにトラブルが発生した場合でも、2ピース設計であれば臼歯部の補綴装置のみを対象として治療を行うことができます。

つまり、

  • 修理範囲が限定される
  • 補綴物の再製作範囲が小さい
  • 治療期間や費用を抑えやすい

というメリットがあります。

一方で、1ピース設計の場合は前歯部から臼歯部までが一体化した補綴装置となるため、仮に一部のインプラント体に問題が生じた場合でも、補綴装置全体のやり替えが必要になる可能性があります。

これは長期予後を考えた場合のデメリットの一つといえます。

しかしながら、1ピース設計にも大きなメリットがあります。

それはインプラント埋入本数を1本減らすことができる点です。

本症例では、

【2ピース設計】 前歯部と臼歯部を分割

インプラント5本埋入

【1ピース設計】 前歯部から臼歯部までを連結

インプラント4本埋入

となるため、

  • 外科的侵襲を軽減できる
  • 治療費を抑えられる
  • 手術時間を短縮できる

という利点があります。

どちらの治療計画にも明確なメリット・デメリットが存在するため、どちらが絶対的に正しいというものではありません。

当院では、それぞれのリスクとベネフィットについて十分にご説明したうえで、患者様ご自身に治療方針を選択していただいております。

今回は患者様が

「可能であるなら、治療費をできるだけ抑えたい」

というご希望をお持ちであったため、十分なインフォームドコンセントのもと、1ピースによるロングスパンインプラントブリッジを選択することとなりました。

骨造成について

今回の症例において、インプラント体を埋入するためには骨幅・高径を確保することが絶対条件になります。その為、

サイナスリフト(ラテラルアプローチ)、スプリットクレスト、GBR(骨造成術)を適切に組み合わせることで、インプラント周囲に十分な骨量を確保することができました。

その結果、インプラントを長期的に支えるための安定した口腔内環境を構築することができ、機能面・審美面・清掃性のいずれにおいても良好な結果を得ることができました。

「骨が少ない=インプラントができない」 というわけではありません。

重要なのは、

  • どの部位にどの程度の骨不足が存在するのか
  • どのような方法で骨を再建するのか
  • 将来的にどのようなリスクが考えられるのか

を正確に診断し、長期予後を見据えた治療計画を立案することです。

術後経過

本症例では、複数の骨造成術を組み合わせることでインプラント治療を可能にし、患者様のご希望であった「しっかり噛める固定式の歯FIX」を実現することができました。

治療後は発音や咀嚼機能も大きく改善し、患者様にも大変喜んでいただくことができました。

現在は遠方へ移住されておりますが、東京へ来られる際には必ず定期検診にお越しいただいております。治療後も継続して経過を拝見できることは、術者として大変嬉しく、ありがたいことだと感じています。

治療計画を立案する際に重要なのは、単に現在の状態だけを見るのではなく、10年後、20年後に起こり得るトラブルまで想定してプロトコールを検討してます。

インプラント治療は、インプラントを埋入した時点がゴールではありません。

むしろそこからがスタートです。

天然歯と同様に、インプラントも適切なメンテナンスと定期的な管理が必要になります。

長期的に機能し続ける補綴設計と、患者様自身によるセルフケア、そして歯科医院での定期管理、そのすべてが揃って初めて、インプラント治療は真価を発揮します。

本症例は現在治療から5年以上が経過しておりますが、良好な経過を維持しております。

もちろん残存歯については今後も歯周病や加齢に伴うリスクが存在します。しかし、そうした変化も見据えながら長期的なサポートを継続していくことが、私たちの重要な役割であると考えています。

これからも患者様とともに経過を見守りながら、一日でも長く快適に噛める状態を維持できるようサポートしてまいります。

治療前

治療途中

治療後

インプラント治療の注意事項(リスク・副作用など)

  • 外科手術を伴います。術後数日間は、お痛みや腫れ、違和感を伴います
  • メインテナンスを怠ったり喫煙により、悪影響を及ぼすインプラント周囲炎等にかかる可能性があります
  • 糖尿病、肝疾患、心臓病等の場合、インプラント治療ができない可能性があります
  • 全身疾患がコントロールされていない場合、インプラント治療後に治癒不全を招く可能性があります
  • 自費診療(保険適用外治療)となります