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東北大学のチームらが米国老年医学会の学術誌に、歯数の少ない人で認知機能の低下や認知症のリスクが高くなることが報告されております。口腔状態と認知機能はお互いに影響し合っており、【歯の喪失・咀嚼困難・口腔乾燥症】を有している方は、 認知症の発症リスクが上がると報告しております。
65歳以上の高齢者約3万8千人を対象とした9年間の追跡調査では認知症発症のリスクが歯数19本以下の 人では1.12倍、歯がない人では1.20倍高くなることが示されました。また、咀嚼困難のある人で 1.11倍、口腔乾燥のある人で1.12倍、認知症のリスクが高いことも明らかになりました。①歯の喪失が認知症のリスクを上昇させること、 ②咀嚼困難や口腔乾燥といった口腔機能低下も認知症のリスクを上昇させることが明らかになったと報告されております。認知症の予防のためにも、歯を失うことを予防するだけでなく、口腔機能の維持にも気を付けることが重要だと言えます 。

歯を失ってしまった時こそ、しっかり治療行い、しっかり奥歯で咬むとことができれば認知症の発症を予防できるといえます。

長期症例になりますので、インプラントの不具合が生じながらもメインテナンスやリペアをすることがインプラントを長持ちさせることが非常に大切になります。その結果、健康寿命(QOL:Quality of Life 生活の質)を伸ばすことにもつながります。
一般的になりますが、インプラント治療後の10年経過後の残存率は部位などの違いはありますが、約95%、20年で約90%と言われております。日本では1998年頃にインプラント治療が急速に普及し始めました。その為約30年経過症例を拝見する機会も増えてきた印象があります。ですが、長く使っていれば壊れてきます。その為、医療になりますので言葉が正しいかわかりませんが、「トラブルシューティング」がとても大切になってきます。

インプラント治療におけるトラブル(偶発症)は
1.インプラント体が抜ける
2.歯(補綴装置)が壊れる
3.インプラント周囲炎・粘膜炎(インプラントの歯周病)
が主になります。今回はトラブル症例及びインプラントを回避した症例を合わせて供覧してください。

80代 女性 インプラント埋入後20年以上経過症例

他院にてインプラント治療をさせたが、埋入元が閉院した為、インプラントのメインテナンス希望で来院されました。3本のインプラントのうち真ん中のインプラントに出血及び排膿が認められ、レントゲン写真より骨吸収が認められます。ただ真ん中のインプラントはセメントでしっかり固定されてしまっており、上物は外すことが困難な状況です。(当院ではスクリューリテイン方式を採用しているため、このようなトラブルが出た場合、補綴装置を外して、洗浄いたしますが、、、、
セメント固定タイプの為、補綴装置及びアバットメントを外して洗浄することはしていなかったとのことでした。いわる通院はしていたが、インプラント体への適切なメインテナンス処置ができていなかったのかと思われます。

当初、患者様が外科的治療(歯肉を切る治療)をご希望されていなかった為、メインテナンスの間隔を4か月毎から1か月~2か月に変更しインプラント周囲組織の清掃及び洗浄し歯周病菌数の減少させる治療(非外科的治療)をおこなっておりました。ただ、
しかし一向に良くならないどころか、、排膿の量を多くなり不快感が増大していた為、インプラント体の撤去並びに撤去部に骨造成を施行いたしました。

撤去後治癒経過後インプラントブリッジにて再補綴を行いました。
プロビジョナルブリッジにて問題ない為、最終補綴物を入れて終了になります。 費用:
骨造成1650.000円
プロビジョナル:60.000円
最終補綴:540.000円

コメント:患者様にとって長く愛用していただいた、歯を撤去することは心苦しいのですが、周りのインプラント体にも波及する恐れが懸念されたた為、撤去しました。撤去後排膿等は認められず、経過良好です。

補綴装置もスクリューリテイン(ねじ止め式)に変更しトラブルが出たら外し洗浄することで一生持たせるインプラントを目指していきます。

100代 女性インプラント埋入後30年以上経過症例

お元気で長寿の方の症例です。腫れ出血を主訴に来院されました。

黄色い線が骨レベルになります。かなり骨吸収しており、現状厳しいのですが、、、、、長寿の為このままいきます。
ねじ止め式なのですが、補綴装置を外すことはできません。おそらく臼歯部のインプラント体が傾斜埋入なので、並行性がない補綴装置を平行補正せずに試行錯誤して装着したことが原因と考えられます。(インプラント体と補綴装置のミスフィットが原因です。インプラント専門医の先生方ですと、締結時にねじのしまりがスムーズにではないので、ミスフィットしていると手指感覚及びレントゲン写真より判断されている先生が多いと思います。)メンテナンスは継続されていたみたいですが、不適合な補綴装置を外せない状態のまま約30年間経過されてると推測されます。

私が拝見した時点で90代後半でした。外科的侵襲及び衝撃を与えて補綴装置を除去することは、極力避けたいです。ただ患者様は取り外し式の入れ歯は好まないとのことで、可能な限りこのままがいいとの要望でした。インプラントを行ったことで、なんでも咬め、認知症のリスクを軽減且つインプラント治療のおかげで口腔咀嚼機能を最大限維持できている素晴らしい長期症例だと思いますが、口腔内環境はあまり推奨できるものではない為、毎月の非外科でできる最大限(フルコース)治療を毎月おこなっておりました。(もちろんご自宅での清掃及び歯ブラシ以外での補助用具を駆使して。)

理想は補綴装置を外して、エンジンで言うオーバーホールをみたいなことをしたいですが、壊さないと外せない状態です。そうこうしているうちに前のインプラント体が骨との結合がなくなった為、インプラント体のみを横から撤去いたしました。(年齢が100代の為、麻酔も極力使いたくありません。対処療法でできる限り伸ばす。それが患者様との約束です。)

撤去後歯肉の状態は落ち着きましたが、そのほかのインプラント体周囲の骨吸収も認められるため、出血及び排膿は継続しておりまが、ピーク時よりは減少しております。

メンテナンス期間約3年
メンテナンス費用9900円
コメント:賛否両論ある症例かとおもいますが、患者様の意向及び介護者様の意向及び、費用等を最大限苦慮して、できる限りのフォローアップを行わせていただいております。インプラントは顕著の骨吸収があっても少しでも骨とインプラントが結合していれば絶対に揺れません。揺れている=骨とくっついていない為撤去せざるを得なる状態といえます。
インプラント周囲炎のほとんどが、インプラント体のポジション不良(適切な位置及び深度にインプラント体が入らなかった。)もしくはミスフィット(適合不良)が原因と言われております。

70代女性 30年前アメリカでインプラントしたその後のメインテナンス希望及び下顎の前歯が前に出てきたことによる審美障害の改善症例

矢印のインプラント体は歯肉退縮を起した結果インプラント体の金属部が露出してきておりますが、排膿等異常所見は認められません。長年大切にメインテナンスを行ってきた。結果だと思います。今後もしっかりフォローしていきたいと思います。下顎の前歯が歯周病により保存不可の為抜歯をし、セラミックブリッジにて治療いたしました。

インプラントメインテナンス費用5500円
セラミックブリッジ:924,000円

80代女性の症例            

インプラントが揺れていたい、たまに顎にしびれが出る時がある。とのことで来院されました。
CT画像所見より、ブレード型インプラントが神経に近接しており、インプラント除去する方針になりました。約25年ほどしようしていたとのことです。埋入元は閉院しており、詳細は分かりかねますが、現代型インプラントはスクリュー型で円錐形状もしくは円柱形状をしております。昔のインプラントはブレード型もしくはシリンダー型でした。

神経損傷を起こさないように慎重に除去いたしました。神経損傷もなく術後経過は良好です。
治療費:CT検査及びレントゲン検査 約6000円
ブレード型インプラント除去 約6000円

50代男性の症例

7年ほど前、海外で治療されたそうです。
レントゲンレベルにて補綴物の不適合【ミスフィット】が認められます。
【ミスフィット】が原因で補綴物とインプラント体部にギャップが生じることにより歯周病原菌が繁殖しインプラント周囲炎を発症するといわれております。歯肉周囲より出血及び排膿が認めた為、補綴物の再作製をおこないました。

隙間のない適合した補綴物を装着することにより理想的な歯肉に改善しました。
再作製の印象時(型取り)時・ラダーINDEXの採得・試適時のスクリューテス及び・トレントゲンレベルでの補綴物の適合性の確認を3重チェックをすることで、適合の良い補綴物(歯)が完成いたします。
適切なメインテナンス及び適合の良い補綴物・清掃しやすい補綴物が長期安定には不可欠です。

治療費
プロビジョナル:60.000円
最終補綴:548.800円

口腔内は毎日使い続ける器官です。長期間使用するため、継続的なメインテナンス並びにトラブルを未然に防ぐことが大切になってきます。理想的な歯科医院選びは難しいともいます。 私の個人的な意見になりますが、【インプラントを埋入する歯科医師(埋入医)と歯を作る歯科医師(補綴医)及び生涯にわたりメインテナンスをする歯科医師は同じ先生が理想】と思われます。歯科分野も細分化されてきており、中には「私は口腔外科医だから」歯を作る先生は他の先生が担当いたします。という先生がいらっしゃいます、特にアメリカやヨーロッパの先生は細分化されており、特にそれが顕著です。インプラント治療に関して、責任逃れで違うと思います。インプラントに埋入手術はメーカーの企業努力により、とても簡便化されました。ある程度トレーニングを積んだ歯科医師であればだれでも埋入できます。むしろそこから患者様の多様な要望に対応した歯を作り長期的に持たせるための歯を作る方が大変です。

昔、スイスに留学時代に世界的に権威のある口腔外科医が埋入したインプラントが骨結合しなかったことがありました。バクテリアテストをしましたが、異常値は認められなかったですし、口腔清掃状態も良好でしたが、その口腔外科医は口腔内の細菌感染が原因だから感染したと患者に説明し、その後の処置を補綴科医に丸投げしました。(患者さんは泣いていました、、)

私は骨質が硬い(type1~type2)による血流障害が原因で骨代謝(リモデリング)が起きなかったのではと思い、埋入医とディスカッションをいたしましたが、議論が平行線でした。

インプラントを埋入する歯科医師(埋入医)と歯を作る歯科医師及び生涯にわたりメインテナンスをする歯科医師は同じ先生が理想というのはそこにあります。
分けてしまうと時系列的にも原因の詳細が分かりづらくなりますし、責任の所在も判断しづらくなります。私が患者の立場であれば、単なる逃げもしくは責任転換と思います。10年20年使用していく過程でトラブルが起きないことの方が珍しく、トラブルを効率的にリカバリーできるかが、インプラント専門医の神髄だと思います。その点日本の歯科医療は責任をもって同一の歯科医師が診療する場合が多く、安心できると思います。そのような責任感のある先生が見つかるといいですね。

インプラント治療における歯医者選びにお困りでしたら、一度質問してみてください。「インプラント埋入から歯を入れた後のメインテナンスも一貫して〇〇先生が担当していただけますか?」と。もちろん相性がありますから一概にそれのみで判断するのは難しいかとおもいますが、もしかしたら任せられる・信頼のおける歯科医師が見つかりやすくなるかもしれません。

ちなみに日本で勤務医をしていた頃の大学病院では埋入医と歯を作る先生は同一人物で、それが当たり前でした。