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治療症例のビフォー・アフターと詳細

患者様 30代男性
主訴 前歯が折れた。
治療期間 4ヶ月
治療回数 10回
治療概算 60万円(税込)
※費用は治療当時の料金となります
担当医 秋野 徳雄

来院動機

30代男性の患者様です。
「前歯がグラグラしていて不安」「見た目も気になる」とのことでご来院されました。

診査の結果、右上中切歯は歯根破折を起こしており、残念ながら保存が困難な状態でした。
初診時には、以前治療された差し歯が接着剤で一時的に固定されている状態でしたが、著しい動揺が認められ、今にも外れてしまいそうな状態でした。

また、審美面だけでなく、食事や会話の際にも違和感や不快感を感じておられ、精神的にも大きなストレスとなっていました。

治療計画

検査の結果、右上中切歯には歯根破折(垂直破折)が認められ、破折線は根尖部付近まで到達していました。
感染のリスクや予後を考慮すると、歯を長期的に保存することは困難と判断し、抜歯の方針となりました。

抜歯後は、将来的なインプラント治療を見据え、抜歯窩保存術(Ridge Preservation/Socket Preservation)を併用しました。
これは、抜歯後に生じる歯槽骨の吸収を最小限に抑え、骨の幅や厚みをできるだけ維持するための処置です。

特に前歯部では、抜歯後に唇側の骨が大きく吸収しやすく、骨量不足によって審美性やインプラントポジションに影響を及ぼすことがあります。
抜歯窩保存術を行うことで、インプラント治療をよりスムーズかつ予知性高く進めることが可能となります。

また、日本人を含むアジア人はもともと唇側骨が薄い傾向があるため、近年では抜歯窩保存術に加えて、遅効性・非吸収性骨補填材を用いた唇側骨造成を追加し、長期的な骨幅維持を図るケースも増えています。
本症例でも、将来的な審美性と安定性を重視し、唇側骨のボリューム維持を意識した治療を行いました。

■インプラント治療をスムーズに行うための治療戦略について

インプラント治療を安全かつ予知性高く行うためには、抜歯後の骨や歯肉の状態を適切にコントロールすることが重要です。
主な治療方法として、以下のような選択肢があります。

1.抜歯時に抜歯窩保存術(Ridge Preservation/Socket Preservation)を行う方法

抜歯と同時に骨補填材を填入し、抜歯後の骨吸収を最小限に抑える方法です。将来的なインプラント埋入を行いやすくする目的があります。

2.抜歯後に数カ月待機し、骨造成後にインプラントを埋入する方法(待時埋入)

炎症や感染の沈静化を待ってから骨造成を行い、その後インプラントを埋入する方法です。感染リスクを抑えやすく、安定した治療結果が得られやすいという特徴があります。

3.インプラント埋入と骨造成を同時に行う方法

インプラント埋入時に不足している骨を同時に造成する方法です。治療回数や期間を短縮でき、患者様の負担軽減につながります。
これらはそれぞれにメリット・デメリットがあり、感染状態・骨量・歯肉の厚み・審美的要求などを総合的に判断して治療方法を選択します。
特に、抜歯が必要な歯は感染を伴っていることが多く、その周囲組織も細菌汚染されているケースがあります。

そのため、【重度の感染】や【急性症状(腫脹・排膿・強い痛みなど)】が認められる場合に、無理に抜歯窩保存術(リッジプリザベーション/ソケットプリザベーション)を行うと、感染を増悪させてしまうリスクがあります。
そのようなケースでは、まず抜歯と徹底した歯周組織の掻爬(そうは)を行い、1〜2カ月ほど炎症の沈静化を待ってから骨造成を行うことで、成功率の向上や術後合併症の軽減につながります。
※詳しくはインプラント専門医へご相談ください。

今回は、感染状態を慎重に評価したうえで、患者様の治療期間の短縮や身体的負担の軽減を考慮し、抜歯時に抜歯窩保存術(Ridge Preservation)を行い、その後、骨造成とインプラント埋入を同時に行う治療法を選択しました。
さらに、二次手術(2次OPE)時には、必要に応じて歯肉移植術を併用、もしくは口蓋側歯肉を唇側へ移動させることで、唇側歯肉の厚みを確保する治療計画を立案しました。

前歯部では、骨だけでなく歯ぐきの厚みやラインが審美性に大きく影響します。
そのため本症例では、自然な歯肉形態を長期的に維持できるよう、軟組織マネジメントにも重点を置いて治療を行っています。
また、前歯部の審美性に配慮し、二次手術当日に仮歯を装着しました。

これにより、治療期間中の見た目にも配慮しながら、歯ぐきの形態を整え、最終補綴物へ移行しやすい環境を作ることができます。
治療期間を可能な限り短縮しながら、自然な前歯のラインと歯ぐきの形態を維持し、審美性と機能性の両立を目指した治療を行いました。

治療後について

前歯部のインプラント治療では、機能回復だけでなく、周囲の歯や歯ぐきとの“調和”が非常に重要になります。
特に前歯は会話や笑顔の際に最も目立つ部位であり、わずかな色調や形態の違いでも違和感につながるため、高い審美性が求められます。

今回の患者様からは、

  • 「出張が多いため、なるべく手術回数を少なくしたい」
  • 「人工的に綺麗すぎる歯ではなく、自分の口元になじむ自然な仕上がりにしてほしい」

というご希望がありました。
天然歯は年齢とともに、咬耗(こうもう)や摩耗(まもう)によって少しずつ使用感が現れます。
そのため、単純に“真っ白で綺麗な歯”を入れるだけでは、周囲の歯から浮いてしまい、かえって不自然に見えることがあります。

患者様ごとに「自然に感じる歯」のイメージは異なるため、前歯部の審美治療では、事前のヒアリングやカウンセリングが非常に重要になります。
色調・透明感・歯の丸み・表面性状・隣在歯とのバランスなどを細かく確認しながら、その方の口元に調和するデザインを目指します。

また、見た目だけでなく、

【長期予後に優れること】
【清掃性に優れること】
【長期的に安定すること】

この3点も、インプラント治療において非常に重要な要素です。
そのため当院では、審美性だけでなく、メンテナンス性や将来的なトラブル対応まで考慮し、スクリューリテイン方式を採用しています。
セメント固定式と比較して、将来的な脱着やメンテナンスが行いやすく、インプラント周囲炎のリスク軽減にもつながります。

今回の症例では、前歯部の審美性に十分配慮しながら、機能性・清掃性にも優れた設計とすることで、長期的な安定を目指した補綴装置を装着することができました。
治療開始から約4カ月で、最終補綴物であるオールセラミッククラウンの装着まで完了し、患者様にも大変ご満足いただくことができました。

治療前

治療後